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さて、南の窪地にはうつくしい赤い羽を持つ鳥が、じっと巣で卵をあたためておりました。その巣は燃えさかる炎でできていて、その熱いことといえば、まわりの土地には一本の草も生えていないほどでした。 騎士エオスは馬を降り、ていねいにお辞儀をしてこうたずねました。 「南の窪地の鳥、西の街道の虎よりももっと賢いお方、とび色の瞳と亜麻色の髪の姫君が、呪いを解く方法をたずねにまいりませんでしたか。あの方は王国の宝、わたしの愛する人なのです」 すると鳥はばさりと羽を広げて、巣の炎をごうごうと燃え上がらせながら答えました。 「王国の騎士エオス、獅子の心を持つエオス、あの娘がユピテル姫と知ってはいたけれど、あんまりわたしの卵を割ってしまおうとするから目玉をつついて殺してしまったよ!」 そう言うと、鳥はまた羽を閉じてじっと卵をあたためはじめてしまいました。騎士エオスがいくら声をかけてみても、もううんともすんとも言いません。しかたなく、騎士エオスと従者のヨハネスは馬に乗って来た道をとぼとぼともどってゆきました。 しかし世の中にはよくよくありがたいことに迷える子羊を導く存在はどこにでもいるようで、よく物事をわきまえたトネリコたちがざわざわとおしゃべりをしていたのは、騎士エオスがお城を出てから十日目のことでした。 「それにしても南の窪地の鳥は嘘つきだねぇ!」 と一本目のトネリコが言い、 「まったく! ユピテル姫は卵に祝福まで与えてくれたのにさ!」 と二本目のトネリコが言うと、三本目のトネリコがさわりさわりと笑いました。 忠義な従者のヨハネスはやっぱりトネリコたちの言葉もすっかり理解していたものですから、彼らの言葉を主にそのまま伝えました。すると騎士エオスは今度もトネリコたちを見上げてこう言いました。 「トネリコたち、知恵の泉によって茂る木々、ユピテル姫は南の窪地の鳥に目玉をつつかれて死んでしまったのではないか」 すると三本目のトネリコが答えました。 「いいえ、賢い姫君の愛する方。ユピテル姫は西の街道の虎よりも、南の窪地の鳥よりももっと賢い、東の河の竜の元へいらっしゃいました」 忠義なヨハネスがこれを伝えますと、騎士エオスはたいそう感謝してトネリコたちにいずれ何かお礼をしたい、と申し出ました。三本のトネリコはさわさわとおたがいの顔を見合わせて、おずおずとこう言いました。 「それでは勇敢な騎士エオス、もしもできることならば、あの南の窪地の鳥を退治してください」 「あの鳥はわたしたちに辛いことばかりするのです」 「近くの森の木々も、あいつの炎がみんな焼き尽くしてしまいました」 騎士エオスはユピテル姫を見つけてお城にもどり、南の森に住むフクロウたちの願いを聞いてからあらためて約束を守りに来ることにしようと言い、従者のヨハネスをつれてまた馬にまたがって三日三晩を東へと駆けました。 |
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